令和6年版高齢社会白書(内閣府)によると、65歳以上の一人暮らし世帯は男女ともに増加傾向にあり、昭和55(1980)年には65歳以上の男女それぞれの人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、令和2(2020)年には男性15.0%、女性22.1%となり、令和32(2050)年には男性26.1%、女性29.3%になると見込まれています。
今後ますます、おひとり様の高齢者世帯が増えていきますが、おひとり様が実際に直面する課題と、それに対する対策についてまとめました。
(1)見守り支援(日常生活における見守りや緊急時の支援)
おひとり様のニーズに応える対策が、「見守り契約」です。具体的には、本人に対して定期的に電話や面談などで意思疎通を図り、生活状況や健康状況の変化、判断能力の状況などを確認し、異常があれば速やかに適切な対応を取り、「見守る」内容の契約をいいます。
(2)日常生活における法的支援
日常生活における法的支援に応える対策が、「任意後見契約」です。任意後見制度とは、本人が十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ選んだ代理人(任意後見人)に対し、自分の生活・療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約を公正証書で結んでおくものです。これは特殊詐欺被害防止にも有効です。
(3)入院や入所の際の身元引受
入院や入所の際のニーズに応える対策が、「身元引受契約」です。現在、日本の法律で認められている「成年後見制度」や「任意後見制度」は、一見、身元引受と似ているかのように思えますが、これらの制度は判断能力が低下した場合に、その判断能力を補うものです。
身元引受人の責務である「連帯債務の負担」「身柄や残置物の引き取り」等の実施を目的としたものではなく、他に身元引受人の責務を実施する制度も見当たりません。
そのため、身元引受人を得るには、信頼できる人(または会社)と「身元引受人になってもらうための契約」を結ぶ必要があります。その際には、終末期医療の希望を文書にしておき、尊厳死をご希望の場合は尊厳死宣言公正証書を作成しておきましょう。
(4)死後の事務手続き
死後の事務手続きに応える対策が、「死後事務委任契約」です。葬儀の施行や永代供養(納骨)などの「死後の事務手続き」に関して、民法に定める「委任契約」を締結し、お願いした人に権限を与える契約であり、「どのような葬儀社に依頼するか」「どの寺院に依頼するか」などは契約でできるだけ詳細に定めます。死後事務委任契約の際に、エンディングノートを受任者に作ってもらいましょう。
(5)死後の遺産手続き
死後の遺産手続きに応える対策が、「遺言書作成」です。自身が亡き後、遺産を法律で定める近親者が引き継ぐことを「相続」といい、誰に何を「相続」させるかを自身の最終意思で定めて書面に残したものを「遺言書」といいます。本人の意志であることが重要であるため、遺言書は「書面」にしなくてはならず、その書き方も法律で厳格に定められています。さらに、その遺言を実行するために遺言執行者も遺言書に定めましょう。
(1)から(5)は法的なアプローチに基づく対策ですが、健康で安心な生活を送るには、ご自身の健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)と資産寿命(老後の生活を営んでいくにあたって、それまでに形成してきた資産が尽きるまでの期間)も検討する必要があります。
厚生労働省「平均寿命と健康寿命」によると、2019年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。2001年から男性の方が女性より健康寿命は延伸しており、男女差も若干縮小しています。
また、総務省「家計調査報告-家計収支編(2023年)」によれば、平均的な無職単身者世帯で毎月3.1万円の赤字が出ています。そのため、早いうちから家計管理や資産運用などを積極的に行っていくことが重要です。
豊かな老後生活を送るために必要な対策は多岐に渡りますが、ご本人の置かれている状況や今後の展望により、ご自身に適した対策は変わってきます。まずは現状確認から、お気軽にご相談下さい。
執筆者
山内プランニングオフィス
財務コンサルタント 山内 智弘
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